先週の土曜日、朝起きてスマホでfacebookを見ていたら友人のアイコンが虹色になっていた。
タイムラインで流れてきたニュースを見ると、どうやらアメリカの最高裁で同性婚が合法となり、それを支援していたfacebookがアイコンを虹色にするアプリを配布したらしい。
アメリカのハフィントンポストやmashable、TEDなどのネットメディアのアイコンも虹色になり、マークザッカーバーグやfacebook、ホワイトハウスのアイコンも虹色になっていた。
オバマ大統領、マドンナやデカプリオを始め様々なセレブが同性婚合憲を支持し、各所で合憲を祝うパレードが行われ、アメリカはお祭りムードだったようだ。
facebook上では2600万人がアイコンをレインボーに変え、合憲を支持した。
最高裁が合憲と認める前、アメリカの50州のうち、37の州と首都ワシントンが合憲と認めていたが、13の州は認めていなかったという。では同性婚がどのような道を辿って合憲になったのか、過去10年の同性婚を後押しした10の出来事で振り返ってみたい。
■ 2005年
✔︎エルトン・ジョンがイギリスで同性婚
エルトン・ジョンが同性婚のするセレブの先駆けとなった。
2005年当時はイギリスでのシビル・パートナーシップ法という事実上の同性婚であったが、2014年にイギリスで同性の結婚が合法化されたのちに正式に入籍している。
■ 2006年
✔︎ブロークバックマウンテンがアカデミー賞受賞
“マッチョな”アメリカの象徴であるカウボーイがゲイというストーリーの「ブロークバックマウンテン」がアカデミー賞で同年作品中最多の8部門にノミネートされ、監督賞、脚色賞、作曲賞の3部門受賞。
アン・リー監督は「普遍的なラブストーリー」と言っていることはオバマがfacebookに書き込んだ「Love just won」に繋がっているように見える。
■ 2009年
✔︎オバマ、アメリカ合衆国大統領に。
オバマは2012年の大統領選時に同性婚を支持した。
オバマはネットやソーシャルメディアを味方につけて当選したと言われているが、その立役者は20代前半の若者であった。ザッカーバーグと同じくfacebookの共同創設者の一人であり、my.barackobama.comというソーシャルメディアキャンペーンを率いたクリス・ヒューズ氏である。オバマが彼のことを”My Internet Man”と評したことはアメリカでは有名な話だ。
ヒューズ氏は2010年に同性と婚約をしている。ただ、当時は彼らの住むニューヨーク州は同性婚を認めていなかったために結婚式は行わなかった。婚約相手は「Freedom To Marry」という同性婚の合法化を訴えるサイトの監修をしているショーン・エルドリッジ氏。
ヒューズ氏は「ソーシャルキャンペーンを駆使して1、2年後には結婚したい(ニューヨーク州での同性婚を合法化したい)」と語っていた。実際、翌2011年にニューヨーク州の同性婚合憲を勝ち取り、今回アメリカ全州を合憲としたことは見事、としか言いようがない。
ザッカーバーグほどの知名度は無いが、facebookの創設者であり、20代前半でアメリカ大統領選のウェブキャンペーンを牽引、その後同性婚を支持するオバマを大統領にし、自身の信念を達成させる。こんな華麗な人生はあるものなのだろうか。
2012年にクリス氏とショーン氏は結婚した。
✔︎レディ・ガガ、MTV Video Music Awardsで「神とゲイに感謝するわ」と受賞スピーチ
2000年代の最大のポップアイコンであるレディ・ガガは自身の初期の成功はLGBTのグループの支持があったとし、彼ら彼女らへの支持を表明している。
2010年にはアメリカ軍の同性愛者雇用を容認しない「Don't Ask, Don't Tell(訊かず、言わざる)」のポリシーを撤廃するための演説を行っている。アメリカ軍は同性愛を禁止していて、実際1.2万人が同性愛を理由に解雇されている。「訊かず、言わざる」とは黙っていれば、軍に置いといてやるという意味である。レディ・ガガは同性愛を嫌う軍人こそ家に帰る(解雇される)べきと訴えた。
2011年には同性愛者支援の功績でシドニーから名誉市民の称号を贈られている。
80年代—90年代のポップアイコンであったマドンナもLGBTの支持を表明し続けている。彼女が世界に広めたのはヨガやマクロビオティックだけではない。
彼女が世界に広めたHOUSEミュージックは黒人のゲイが生み出した音楽であり、ヴォーギング(Vogueing)というダンススタイルは黒人やラテン系のゲイが雑誌の「VOGUE」のモデルのポージングを真似て作り出したものである。
■2010年
✔︎ 映画SEX & THE CITY 2 公開
当初から恋愛の多様性を描いてきたSEX & THE CITYの映画第二弾の冒頭17分はスタンフォードとアンソニーに同性婚の結婚式から始まる。大変豪華でロマンチックな結婚式シーンなので、まだの方は1度見ることをオススメする。
映画の中で45州はまだ同性婚が合憲ではないという話が出て来るので、公開された2010年から5年で大きな変化があったと言える。
また、ミランダ役のシンシア・ニクソンはプライベートで2012年に同性と結婚している。
■2011年
✔︎アメリカで同性愛者の軍務を禁止した同性愛者の軍務禁止法の廃止
元々アメリカ軍はホモフォビアと言われる「同性愛や同性愛者に対する恐怖感・嫌悪感・拒絶・偏見、または宗教的教義などに基づいて否定的な価値観」を持つ人間が多かった。同性愛者の入隊は禁じられ、同性愛者と分かると除隊しなければならなかったが、オバマ大統領が公約に基づき、この法律を撤廃した。
レディ・ガガの強い訴えも廃案への後押をしたのかもしれない。
■2014年
✔︎APPLE CEOティム・クック氏 ゲイをカミングアウト
スティーブ・ジョブス氏の後、APPLEのCEOに就任したティム・クック氏はブルームバーグ誌でカミングアウトした。理由は自身がゲイであることを明かすことで同じ立場の人々を励ますため。クック氏は自分がゲイであることを公表した最初のフォーチュン500社のCEOだという。
■2015年
✔サム・スミス グラミー賞に輝く
自身をゲイとカミングアウトしているサム・スミスが︎グラミー賞に輝く。
Record of the Yearに輝いた「Stay with Me」は一晩の関係を持った相手に「去らないで」と訴える曲だが、LGBTであってもストレートであっても心に響くのは、彼が「普遍的な愛」を表現しているからだろう。
✔︎オレゴン州でアメリカ初のバイセクシャルの州知事が生まれる
︎オレゴン州の州知事にバイセクシャルを公表しているケイト・ブラウンさんが知事に就任した。オレゴン州は、元々ポートランド市長がゲイ、また州下院議長がレズビアンだとすでに公言。多様性に対して寛容な地域である。
オレゴン州の中心地であるポートランドは、自由と平等な気風やオーガニックフードや地産地消などの持続可能な生活を求める文化が注目を集め、全米で一番住みたい都市にも選ばれている。
またポートランドはOECD(経済協力開発機構)でもメルボルン、バンクーバー、パリ、日本の富山とともにコンパクトシティのモデルケースに選ばれるなど、様々な方面から注目を集めている。
何故ポートランドがこのような文化があり、経済的にも注目されるのだろうか。
その理由は佐久間 裕美子さんの「ヒップな生活革命」に詳しく書かれている。今後のビジネスや文化のトレンドを読む上でも非常に参考になる本なので、興味を持った人には是非読んでほしい。
■ソーシャルメディアの影響
今回の同性婚合憲を大きく後押ししたものの一つにfacebookをはじめとするソーシャルネットワークの存在があるであろう。
ソーシャルメディアは意思のあるものを結びつける。暴動やデモやパレードの規模を大きくし、時には革命を起こす。少数派と言われているグループから大統領を生み出す。1人では声は小さいが繋がれば声は大きくなる。
ザッカーバーグが2008年と2015年のfacebook上のLGBT関連のグループ数をシェアしていたが、7年間でかなりの数が増えている。この投稿には現在28万のいいねと1万以上のコメントが付いている。
今、世界はすごいスピードで変化している。残念ながら良い方向だけに変化しているとは思えないが、人々が繋がることで生まれるエネルギーによって、不平等や偏見、差別、格差、そういうものがどんどん小さくなり、フラット(平等)な世界に近づく流れは止まらないだろう。