今回は欧米でNGOやNPOや一般企業のCSR活動の支援を行うグリーンエージェンシーについて書きたいと思う。
昨年の7月に友人と渋谷で飲んだ。
友人はCMの監督をやっていて、カンヌの広告祭から帰って来たところだった。
一緒に飲んだ友人の仕事仲間にカンヌでグリーンエージェンシーの人たちに「どうせお前らは大企業の広告しか作らないんだろ」と言われたと聞いた。
自分も知らなかったのだが、欧米にはグリーンエージェンシーという広告代理店があり、NGOやNPOや一般企業のCSR活動の支援を行っているらしい。
確かに海外のNGOやNPOや一般企業のCSRの広告は良くできている。
ここ数年広告業界ではソーシャルグッドという言葉が使われ、企業が社会的な貢献を果たす広告が賞を取るケースが多かった。
例えば、コカコーラは数年間から自動販売機が人を幸せにするというテーマで広告を作り続けている。その一つに長年対立が続いているインドとパキスタン両国に相手国側の様子が見える自動販売機を置き、それぞれに与えられた「手を合わせる」「ピースマークや笑顔を描く」「踊る」というミッションを行うとコカコーラが貰えるというような内容。笑顔を見ていると他国の事でも少し嬉しくなる。
Coca-Cola Small World Machines - Bringing India & Pakistan Together
今年はチリのユニセフがスマホを使ったネットいじめについての広告が受賞したようだ。
ネットいじめ「たった1回の撮影が自殺に追い込む」 ユニセフのポスターは語りかける (The Huffington Post)
気になる方は「ソーシャルグッド カンヌ」「ソーシャルグッド 事例」などで検索すると色々出てくるので是非。
少し「カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル」について説明しておくと、毎年6月末フランスのカンヌで行われ、世界3大広告賞の中でも一番の注目を集め、世界中から約1万人以上の広告関係者が集まる。
2013年、Perfumeがプロジェクションマッピングを駆使したパフォーマンスを行ったことから、広告関係ではなくても知っている人は多いだろう。今年はマツコロイドが賞を獲ったらしい。
【HD】Perfume Performance Cannes Lions International Festival of Creativity
話をグリーンエージェンシーに戻すが、これらのソーシャルグッドな広告を全てグリーンエージェンシーが創っているわけではなく、ほとんどは普通の広告代理店が創っている。
ただ、欧米にはNGO、NPOを支援するグリーンエージェンシーがあり、NGO、NPOも広告表現やクリエイティブを重要視し、自分たちの活動を広め、世界を変えようとしている。
宣伝・広報戦略に優れたNGOの事例としてイギリスの反戦団体の「Stop the war coalition」のアフガニスタン戦争を批判する動画を紹介しよう。
広告賞は受賞していないが、Information is Beautiful Awardsというインフォグラフィックを表彰するアワードで賞を受賞している。
音楽はブライアン・イーノ(Windows95の起動音を創った人で、U2などのプロデューサー)が2010年に老舗テクノレーベルWarpからリリースしたものだ。
What is the true cost of the Afghanistan war? Narrated by Tony Benn. Music by Brian Eno.
ビデオから読み取れる2010年時点でアフガニスタン戦争の現状は次の通り。
- 戦費は上昇をし続け、2004と比べ2009年と2010年合わせると100倍に
- 10万人の看護師と15万人のケアワーカーの費用が掛かっている
- アフガニスタン市民の犠牲者は4万人
- そのうちNATO軍を中心した国際治安支援部隊(ISFA)による犠牲者は25%
- 世界の30%の難民がアフガニスタンの難民
- 74%のイギリス国民がアフガニスタン戦をすぐに終わらせたいと考えている
淡々としたナレーションに音楽が絡み、インフォグラフィックが非常にアジテーショナルに物語り、見るものに深く訴えかける。
Stop the war coalitionのサイトの過去半年のアクセス状況を見たが、多い月には40万人のアクセスがあるようだ。(similar web)
NGOのサイトとしてはかなりのアクセス数かと思われる。
では日本ではどうであろうか?
デザイン、ソーシャルメディア、Youtube、人々に訴えかける手段は今ではいくらでもあるが、うまく活用できている団体は多くないようだ。
先日代々木公園をジョギングしていたら、何やら騒がしい。5月1日だったのでメーデーかと気付くが、様々な場所で拡声器を持った人たちが大音量で様々なことを主張している。またガリ版で作ったと思われるチラシもいっぱいもらった。主張の内容には共感出来ることもある。ただ、その表現方法に大きな問題があると思った。
彼らのやり方は50年間ほぼ変わっていない。
「闘争」「団結」「粉砕」など現在では一般的に使われていない言葉を大声で叫び、ゼッケンにノボリにシュプレヒコール。様々な場所で無計画に行われるアジテーションにメーデー会場はカオスかと思った。仮に無関係の普通の感覚の人が遭遇したら異様なものに写り、逆に拒絶反応を示す人も多いだろう。それでは全くの逆効果であり、ただの自己満足で、世の中を全く動かせないことになる。
多くの人は楽しいもの、かっこいいもの、かわいいもの、きれいなものが好きだ。
それはロックミュージシャンかもしれないし、DJやラッパー、アイドルかもしれない。映画かもしれないし、アニメかもしれないし、お笑いかもしれないし、ロックフェスかもしれないし、企業が創るソーシャルグッドなキャンペーンのアイデアかもしれない。
コカコーラに学べとは言わないが、人に伝える為、人に理解され、注目を集め、世の中を変えるインパクトを持つ為にどうのようにすれば良いか考えるべきかと思った。
ただ、最近よく報道に出てくるSEALDsという学生の団体はデザイン、ソーシャルメディア戦略などに力を入れている。
ウェブサイトを見たらfacebookのいいねが14,000、ツイートが16,400あった。サイトも良くできている。アクセスも急増しているようで、6月は5万アクセスを超えているようだ(similar web)。
彼らのような若者が社会を変えるようなインパクトを持つことを期待する。